子育て費用に関して関心はあるものの、実際にいくらぐらいかかるのか知らないことも多いのではないでしょうか。
子育てに必要な費用には「養育費」と「教育費」がありますが、この先子どもの成長と共に家計に大きな負担となってくるものが「教育費」です。
早めの資金準備を視野に入れて計画的に準備できるよう子どものそれぞれのステージで年間いくらかかるのか把握しておきましょう。
年間で保育園・幼稚園の費用にいくらかかるのか
子どもの最初の大きな教育費としてかかるのが保育園・幼稚園の費用です。公立と私立を比べると平均費用に20万円ほどの違いはでてきます。
保育園にかかる平均年間費用
認可保育園の場合には、平均保育料が253,656円かかります。
認可外保育園の場合は、平均保育料が479,995円となっています。
幼稚園にかかる平均年間費用
公立幼稚園の場合は、223,647円(うち学校教育費120,738円、学校給食費19,014円、学校外活動費83,895円)です。
私立幼稚園の場合は、527,916円(うち学校教育費331,378円、学校給食費30,880円、学校外活動費165,658円)となります。
幼児教育の無償化
2019年10月から幼児教育・保育の無償化が始まりました。
3歳~5歳の子どもは、幼稚園、認可保育園、認定こども園等に通う場合、毎月の利用料が無償となります。
幼稚園のみ月額25,700円を上限とします。
0歳~2歳の子どもは、住民税非課税世帯を対象とし、毎月の利用料が無償です。
認可外保育施設等に通う場合、3歳~5歳の子どもは月額37,000円まで、0歳~2歳のこどもは住民税非課税世帯を対象に月額42,000円を上限に利用料が無償となっています。
幼稚園の預かり保育の場合、3歳~5歳の子どもの幼稚園の利用に加え、利用日数に応じて最大月額11,300円まで無償で利用できます。
ただし、無償化の対象となるには、就労等の条件を満たし、自治体から保育の必要性を認められなければなりません。
無償化されるのは、あくまでも保育園・幼稚園の利用料です。入園料、行き帰りの送迎費、給食費、行事費などの費用は負担することになります。
幼児教育の無償化は、世帯の収入や利用施設、年齢などで内容が異なってくるので、事前に調べて確認しておきましょう。
年間で小学校の費用にいくらかかるのか
小学校にかかる平均年間費用
公立小学校の場合は、平均321,281円(うち学校教育費63,102円、学校給食費43,728円、学校外活動費214,451円)の費用がかかります。
私立小学校の場合は、平均1,598,691円(うち学校教育費904,164円、学校給食費47,638円、学校外活動費646,889円)です。
公立小学校と私立小学校の年間費用を比べると、1年間で100万円以上の費用の違いがあります。
1年間の費用の違いは100万円ほどですが、小学校は6年間通うことになります。
6年間の公立小学校の総額が1,927,686円なのに対して、私立小学校の総額は9,592,146円とかなりの費用の差がでることになるでしょう。
年間で中学校の費用にいくらかかるのか
中学校にかかる平均年間費用
公立中学校の場合は、平均488,397円(うち学校教育費138,961円、学校給食費42,945円、学校外活動費306,491円)です。
私立中学校の場合には、1,406,433円(うち学校教育費1,071,438円、学校給食費3,731円、学校外活動費331,264円)となります。
3年間の総額では、公立中学校では1,465,191円に対して、私立中学校は4,219,299円となり、およそ280万円の違いがあります。
年間で高校の費用にいくらかかるのか
高校にかかる平均年間費用
公立高校の場合には、457,380円(うち学校教育費280,487円、学校外活動費176,893円)です。
私立高校の場合は、969,911円(うち学校教育費719,051円、学校外活動費250,860円)となります。
3年間の総額にすると、公立高校では1,372,140円かかるのに対して、私立高校は2,909,733円の費用がかかります。公立高校と私立高校に通う場合では、かかる費用に150万円ほど差がでてきます。
高等学校等就学支援金制度(高校無償化)
条件を満たし認められた家庭において、支援金が支払われる制度です。
公立高校、私立高校のどちらでも利用できます。改正される前までは、年収910万円未満の世帯が補助の対象でありましたが、2020年4月に改正され、私立高校の補助金が引き上げられました。
モデル世帯(両親のどちらか一方が働いており、16歳以上の高校生1人、中学生1人の子どもがいる4人家族)の場合、年収910万円以上の世帯は対象とならず、年収590万円~910万円未満の世帯には月額9,900円が支給されます。
年収590万円未満の世帯には、平均授業料の水準まで支給され、世帯の収入に応じて加算した額の支給もあります。
年収の判定基準も地方税の「所得割額」から「課税所得」に変更となりました。
年間で大学費用にいくらかかるのか
大学にかかる平均費用
・公立大学
公立大学の場合は、初年度納付金の平均額が932,251円です。
4年間になると、入学料に392,391円、授業料に2,154,936円、合計2,547,327円の費用がかかってきます。
・国立大学
国立大学の場合は、初年度納付金の平均額が817,800円です。
4年間では、入学料が282,000円、授業料に2,143,200円かかり、合計2,425,200円となっています。
・私立大学文系
私立大学文系の場合、初年度納付金の平均額は、1,166,922円です。
4年間では、入学料に229,997円、授業料に3,142,324円、施設設備費605,376円、実験実習費36,448円、その他300,020円、合計すると、4,314,165円の費用がかかります。
・私立大学理系
私立大学理系の場合は、初年度納付金の平均額が1,544,962円となっています。
4年間では、入学料254,309円、授業料4,422,464円、施設設備費740,152円、実験実習費251,448円、その他240,484円、合計は5,908,857円です。
・私立医歯系大学
私立医歯系大学の場合、初年度納付金の平均額が4,822,395円です。
私立医歯系は6年間通うため、入学料1,073,083円、授業料17,206,812円、施設設備費5,289,054円、実験実習費1,194,378円、その他8,348,376円、合計33,111,703円ほどかかってきます。
大学では、国公立大学か私立大学のどちらを選ぶのかで費用が変わってきます。
しかし、私立大学を選ぶ場合、費用の違いが文系か理系かでもあります。
私立大学文系と私立大学理系の費用の違いは160万円ほどです。また、もし医歯系に進む場合には大幅に費用が変わってくるでしょう。
教育資金の貯め方とメリット・デメリット
教育費は一般的に学齢が高くなるほど高額になる傾向があり、大学在学中は教育費を含む支出が収入を上回るために家計が赤字に陥るケースも生じるので、希望の進路に向けた早めの準備が不可欠です。
教育費をどうやって準備すればいいのかわからないという方に向けて、教育資金の貯め方とメリット・デメリットを紹介します。
児童手当をすべて貯蓄するといくらになる?
子どもを養育する家庭に行政から支給される児童手当。
所得制限はあるものの、多くの家庭が受け取れる制度となっています。この児童手当を子どもの将来の教育費に充てるために貯蓄しようと考える人も多いでしょう。
子どもの年齢や数などにより支給額が変わるため、児童手当いくら貯まるかは家庭により異なります。
しかし、生まれてから中学校卒業まで受け取れる児童手当をすべて貯蓄にまわすと、総額で200万円前後貯まることになります。
子どもの教育費は1人あたり1000〜2000万円前後は最低でもかかるといわれているので、児童手当をすべて貯蓄にまわしても足りません。
それでも、15年間しっかりと貯めておけば、教育費として十分に活用することができるでしょう。
教育費は貯金で貯めても大丈夫?
そもそも、教育費を貯金のみでまかなう計画で問題ないのでしょうか。
家庭によって収入が異なるため一概にはいえませんが、貯金にはメリットがある一方でデメリットも考えられます。
教育費を貯金で貯めるメリットデメリットを考えてみましょう。
貯金のメリット
貯金には、自由度や流動性が高いといったメリットがあります。
余裕があればそれだけ多く貯金でき、必要になった場合は、すぐに引き出すことが可能です。
教育費にもいろいろとありますが、使い勝手のよい点は大きなメリットでしょう。
貯金は、基本的に元本割れすることがありません。貯めておいた金額を、そのまま教育費として使える点もメリットの一つです。
貯金のデメリット
金融商品などと違い、金利が低い点が貯金のデメリットです。
安全性が高く元本割れもしない代わりに、貯金したままではほとんど増えることがありません。
また、親などに万が一のことがあった際の保障がない点もデメリットといえます。
それ以上貯金が増えることはないので、場合によっては進学等を諦める必要が出てきてしまうでしょう。
教育費を学資保険で貯める場合は?
金融機関や保険会社が取り扱う、子どもの教育費を準備するための商品である学資保険。
この学資保険を利用するケースではどうでしょうか。
教育費を学資保険で貯めるメリットデメリットをみていきましょう。
学資保険のメリット
毎月決められた保険料を支払うため、自らの意思で貯金することが苦手な人でも、教育費を貯めやすいメリットがあります。
貯金の金利よりも高い返戻率の学資保険が多く、ほとんどの商品で祝い金も受け取れるので、銀行等に預けておくよりもお金が増える可能性が高い点もメリットです。
保障重視型の学資保険であれば、親などに万が一のことがあった際は、それ以降の保険料の支払いが免除される商品もあります。
学資保険のデメリット
満期となる前に解約をすると、支払った保険料よりも少ない金額しか返ってこないケースが出てきます。
また、保険料の支払い額をその都度調整できないため、収入の変動の大きい家庭や支出の予測が難しい家庭などでは、日常生活に影響を与えてしまうことも考えられるでしょう。
教育費を投資信託(つみたてNISA)で貯めることはできる?
投資信託へ積立投資することができ、利益が出た際にも非課税となる「つみたてNISA」。
このお得な制度を活用して教育費を貯めることはできるのでしょうか。教育費を投資信託(つみたてNISA)で貯めるメリットデメリットを考えてみましょう。
投資信託(つみたてNISA)のメリット
積み立てた金額以上のリターンが得られる可能性のある点がつみたてNISAのメリットです。
貯金や学資保険よりも増えるケースも珍しくありません。
特に、10〜20年以上の期間で投資をする場合は、他の方法よりも多くの教育費を用意できる可能性が十分にあるでしょう。
毎月の積立金額の変更も可能です。売却し現金化するタイミングも自由に決められます。
投資信託(つみたてNISA)のデメリット
経済情勢等によっては、積み立てた金額よりも減ってしまうリスクがあります。
教育費が必要なタイミングでパフォーマンスが落ちる可能性もあるので、売却時期の決定が難しく、計画通りに貯められるとは限らない点もデメリットです。
常に株価などを意識することでストレスが溜まってしまう人もいるかもしれません。
教育費が足りないときに利用すべき「国の支援制度」について
いろいろと準備や工夫をしても、思わぬ支出や収入の減少などで教育資金が足りなくなったり、公立への進学を想定していたけれど、子どもが私立への進学を希望するといったケースもあるでしょう。
国や自治体は学校にかかる費用を軽減する仕組みを用意しています。
教育費が足りないときに利用すべき「国の支援制度」についてまとめました。
ぜひ利用しましょう。
幼児教育・保育の無償化
幼児教育・保育の無償化とは2019年10月からはじまった制度です。
少子化対策、幼児教育の重要性などの観点から、保育所、幼稚園、認定こども園などに通う3歳から5歳児の児童の利用料が無料となります。
また、住民税非課税世帯については、0歳から2歳児クラスにおいても利用料は無料です。
認可保育園については、すべての施設が対象となりますが、幼稚園や認定こども園の預かり保育などは上限が設定されています。
また、認可保育園でも副食費・教材費・施設使用料などはかかるため、自己負担がまったくないわけではありません。
関連記事
【幼児教育・保育の無償化とは?】幼児の教育・保育施設の費用が無料になる制度
就学援助制度
就学援助制度とは、経済的な理由で就学が困難な児童・生徒を支援する制度です。
学校教育法第19条において定められており、各自治体によって詳細は異なります。
援助対象者は、生活保護受給者、児童扶養手当受給者、生活困窮者など、各市町村によって規定されています。
対象者として認められると、学用品、修学旅行費、給食費、クラブ活動費、PTA会費をはじめ、学校生活に必要な諸費用が援助されます。
申請については、郵送や通学している学校から配布される書類に必要事項を記入して申し込みを行う必要があります。
関連記事
【就学援助制度とは?】小学校や中学校に通う児童がいるが経済的に困っているという世帯を支援する制度
高等学校等就学支援金制度
高等学校等就学支援金制度とは、公立私立に関わらず、高校に通う生徒に対して授業料が実質無償になる支援金を支給する制度です。
以前は公立高校のみが対象でしたが、2020年4月から私立高校も対象に加わりました。
ただし、所得などの要件があり、世帯年収910万円が公立高校における実質無償化の目安です。
モデルケースとして提示されている年収910万円の家庭は、両親のうちどちらか一方が働き、高校生一人、中学生一人の4人世帯となっています。
原則として、入学した年の4月に必要な書類を学校に提出する必要があります。日本国内に在住していて、高校に在学している生徒であれば、誰でも申請することができます。
支給金額は全日制、定時制、通信制などによって異なりますが、基本的には授業料の負担です。
また、高等学校等就学支援金は貸与型の奨学金ではないため、返還する必要はありません。
関連記事
【高等学校等就学支援金制度(高校無償化)とは?】高校の学費が実質無償|わかりやすく解説
高校生等奨学給付金
高校生等奨学給付金とは、授業料以外の教育費を支援する制度です。
授業料以外の教育費としては、学用品、通学用品費、教科書費、修学旅行費、PTA会費などがあります。
高校生等奨学給付金は、主に生活保護世帯、住民税非課税世帯の高校生を対象としています。
文部科学省が管轄する補助事業ですが、具体的な要件、給付額、手続きなどは都道府県によって異なります。
また、申し込み手続きも、保護者が住んでいる自治体が窓口となります。
すべての意志ある生徒が安心して教育を受けられることを目的としており、返済の必要もありません。高校では授業料以外の負担も大きくなるので、教育費が不足する世帯にとって、大きな支えとなる制度といえます。
関連記事
【高校生等奨学給付金とはわかりやすく解説】低所得世帯の教育費用を支援する制度
高等教育の修学支援新制度
高等教育の修学支援新制度とは、2020年4月から開始された大学、短期大学、高等専門学校、専門学校への進学を支援する制度です。
要件確認を受けた教育施設が対象となり、主に住民税非課税世帯とそれに準じる世帯の学生を支援します。
支援内容としては、給付奨学金や授業料等の減免などがあります。
給付奨学金は原則として返還が不要で、授業料や入学金についても免除もしくは減額したものが適用されます。
支援額については、世帯収入などに応じて変わってくるため、詳細は独立行政法人「日本学生支援機構」の奨学金相談センターに確認しましょう。
関連記事
【高等教育の修学支援新制度とはわかりやすく解説】授業料などの減免や給付奨学金の支給を受けられる
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度とは、都道府県の社会福祉協議会によって資金の貸付と必要な支援を提供する制度です。
低所得者、高齢者、障害者が対象となっていますが、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて、貸付の対象となる世帯が拡大されています。
子育て世代が活用できる支援としては、教育支援資金と総合支援資金があります。
教育支援資金には、教育支援費と就学支度費があり、高校や大学などの入学・修学に関する援助を受けられます。
総合支援資金は、教育以外の生活費についても貸付が受けられる制度です。
貸付となるので返済義務は生じますが、連帯保証人を立てる場合は無利子となります。
ただし、貸付にはさまざまな条件が設定されています。
たとえば離職している人が総合支援資金を申請する場合には、ハローワークの登録が必要です。
資金の種類も多いので、まずは市区町村の社会福祉協議会の窓口で相談するのがおすすめです。
関連記事
【生活福祉資金貸付制度とはわかりやすく解説】低所得者向けの生活費貸付制度|申し込み方法や手続きについて
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とは?
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とは、20歳未満の児童を扶養しているひとり親家庭、および寡婦を対象とした貸付制度です。
高校、大学、大学院などに必要な授業料、書籍代、交通費をはじめとする資金を支援します。
厚生労働省が管轄しており、市区町村の福祉担当窓口にて相談が可能です。返済義務は生じますが、連帯保証人を立てると無利子で借りることができます。
母子寡婦福祉資金貸付金は資金の種類が豊富にありますが、貸付の約90%は子どもの教育費として活用されています。
関連記事
【母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とはわかりやすく解説】資金の貸付内容、申し込み方法や手続きについて
まとめ
子どもの教育費には、どの進路を選ぶかによりますが、総額1,000万円以上の費用は必要となってくるでしょう。
すべて私立学校を選んだ場合、さらに2~3倍の教育費は必要となります。
ここでは教育費について触れてきましたが、他にも「養育費」が必要となりますし、実家から通う、親元を離れるなど、それぞれのパターンでもかかってくる費用に違いがでてきます。
資金の準備や計画は早めに視野に入れておきましょう。